シンオウ昔話 その1
原文(DPt, ミオとしょかん)
「シンオウ むかしばなし その1」
うみや かわで つかまえた
ポケモンを たべたあとの
ほねを きれいに きれいにして
ていねいに みずのなかに おくる
そうすると ポケモンは
ふたたび にくたいを つけて
このせかいに もどってくるのだ
漢字かな交じり
シンオウ昔話 その1
海や川で捕まえた
ポケモンを食べた後の
骨をきれいにきれいにして
丁寧に水の中に送る
そうするとポケモンは
再び肉体を付けて
この世界に戻ってくるのだ
考察
おそらく「おくりのいずみ」と「もどりのどうくつ」をさしていると思われる。おくりのいずみの途中までしかない橋からポケモンの骨を水の中に送り、骨は沈み、当時は湖の底であった「もどりのどうくつ」へ流れていく。そして、あの世と繋がるといわれる洞窟内で肉体を付けて戻ってくる。ギラティナの説明文にある「こだいのはか」とは、そこが死んだポケモンたちを流した場所であるからではないだろうか。
関連項目
→戻りの洞窟(記事未作成)
シンオウ昔話 その2
原文(DPt, ミオとしょかん)
「シンオウ むかしばなし その2」
もりのなかで くらす
ポケモンが いた
もりのなかで ポケモンは かわを ぬぎ
ひとにもどっては ねむり
またポケモンの かわを まとい
むらに やってくるのだった
漢字かな交じり
シンオウ昔話 その2
森の中で暮らす
ポケモンがいた
森の中でポケモンは皮を脱ぎ
人に戻っては眠り
またポケモンの皮をまとい
村にやって来るのだった
考察
スコットランドの「
セルキー」の伝承と似ている。人魚の一種であるセルキーも皮を脱いで人間の姿になれた。次の「シンオウ昔話その3」のように、人と結婚することもあったという。
シンオウ昔話 その3
原文(DPt, ミオとしょかん)
「シンオウ むかしばなし その3」
ひとと けっこんした ポケモンがいた
ポケモンと けっこんした ひとがいた
むかしは ひとも ポケモンも
おなじだったから ふつうのことだった
漢字かな交じり
シンオウ昔話 その3
人と結婚したポケモンがいた
ポケモンと結婚した人がいた
昔は人もポケモンも
おなじだったから普通の事だった
考察
昔は人だったものがポケモンになった(と思われる)例としてケーシィ・ユンゲラーが挙げられる。この神話との関係性はそう高くないが、そういった説が図鑑に載るほどであることから、現代においても「ポケモンと人は近しいものである」と考えられていることが伺える。
現実世界と比べて:昔は動物と人間が同じものであったとする神話は北米インディアンなどに見られる。オジブウェ族によると、大精霊が動物たちを作り地上の支配権を与えたが、呪術によって動物の一部が人間になったという。
この「シンオウむかしばなし3」は、異類婚姻譚の一種だろうか。異類婚に関する神話は世界各国に見られるが、このように、人間と動物が同じものだったから普通に交わっていたという伝承はない気がする。シンオウ地方の文化的特異性だろうか。
参考文献
大林太良・伊藤清司・吉田敦彦・村松一男編『世界神話事典』角川選書